(緊張型頭痛の原因と対策)
Q.緊張型頭痛はどうして起こるのですか?またその対策は?
(片頭痛の「片」)
Q. パソコンで「へんずつう」と打ち込むと、「偏頭痛」と変換されることが多いのですが、なぜ「片頭痛」なのですか?
(片頭痛と遺伝)
Q.片頭痛は遺伝しますか?母親も片頭痛持ちなので。
(頭痛の治し方)
Q.頭痛になったら冷やした方がいいのですか?それとも暖めた方がいいですか?
(頭痛の減らし方)
Q.頭痛を減らすには、そのほかにどんなことに気を付けたらいいですか?
(片頭痛前の閃輝暗点)
Q.片頭痛が起こる前の前兆としての閃輝暗点はなぜ起こるのですか?
(緊張型頭痛の原因と対策)
Q.緊張型頭痛はどうして起こるのですか?またその対策は?
【回答】
頭には頭蓋骨周囲の筋肉(側頭筋)があり、その筋肉は頸部、さらに肩の筋肉(僧帽筋・後頭筋)につながっています。一定の姿勢を続けていたり姿勢が悪いとこれらの筋肉にだんだん負担がかかってきます。すると筋肉内の血流が悪くなり、筋肉の中に乳酸やピルビン酸などの老廃物がたまり、周囲の神経を刺激し、締め付けられたような頭痛が起こります。
このような筋緊張は精神的緊張の関与も大きいとされています。精神的緊張が交感神経緊張をもたらし、頸部・背部筋群の慢性緊張をひきおこすようです。
ただ、精神的緊張だけでも脳が痛みに対して過敏になり、筋肉の緊張がそれほど強くなくても頭痛を引き起こすこともあるようです。
緊張型頭痛は男女差がないという報告もありますが、女性に多いという報告もあります。その理由の一つとして重い頭を頸で支えていますから、頭の大きさの割りに頸が細い人、頸の長い人ほど緊張型頭痛が起こりやすいといわれています。男性のほうが相対的に頸が短いので、緊張型は基本的には男性より女性に起こりやすいようです。
また緊張型頭痛は悪循環に陥りやすいといわれています。頭や首の周りの筋肉が緊張することで頭痛が起こり、そのせいで首をあまり動かさないため、ますます筋肉の血行不良になり、首の筋力も弱まる。すると、余計に筋肉が疲労を起こしやすくなり、頭痛を招くことになります。
このように片頭痛が一時的であるのに対して、緊張型頭痛は、だらだらと長期間続きます。
頭痛の起こり方も、漠然とした頭の鈍重感に始まり、1日中持続する傾向があります。
この緊張型頭痛の悪循環を断ち切るためには、筋肉の「こり」を解消することがカギを握っています。
片頭痛が頭蓋骨内外の脳血管が広がることにより起こるのに対して、緊張型頭痛は頭蓋骨周囲の筋肉内の血管が縮むことにより起こるため、緊張型頭痛は、片頭痛と逆に
リラックスやマッサージ、入浴や運動、蒸しタオルで肩や首を温めるなど、筋肉内の血管を広げることが推奨されています。
この時、冷たい湿布は血管を収縮させてしまうため、逆効果になります。
片頭痛の場合は、これらのことを行うと症状が悪化します。
また枕の高さを調整することも大切です。高すぎる枕、柔らかい枕は首の負担になり、知らず知らずのうちに筋肉を緊張させることになります。高すぎず、柔らかすぎない自分に合った枕を選ぶことで予防ができます。
集中して作業を行う時は、休憩を多くとり、正しい姿勢とるよう心がけて下さい。
運動不足の人、姿勢が悪い人、体が冷えやすい人、なで肩の人などは緊張型頭痛になりやすいので注意しましょう。正しい姿勢を保つ、同じ姿勢をとり続けない、適度な運動をする、体を冷やさないといったことを心がけましょう。
ウォーキングやストレッチといった軽い運動を習慣化し、ゆったり、のんびりした時間をもつことが何よりの予防法であり、治療法でもあります。
運動療法や入浴などによっても改善しない緊張型頭痛は薬物療法の対象となりますが、
既に慢性化してしまって連日になっている頭痛に対しては、のみ始めると毎日のむことになる可能性が高く、薬物乱用頭痛に発展してしまう危険性があり、注意が必要です。
英国国立医療技術評価機構は慢性の緊張性頭痛の予防として、5~8週あたり10回までの鍼治療を提案しています。
(片頭痛の「片」)
Q. パソコンで「へんずつう」と打ち込むと、「偏頭痛」と変換されることが多いのですが、なぜ「片頭痛」なのですか?
【回答】
医学用語では「片頭痛」と定められています。それは昭和18年に第11回日本医学会の医学用語選定委員会が選定し、それを受けて昭和19年7月25日に南山堂から、医学用語集が発刊され、そこには「片頭痛」が採用されています。
片頭痛はもともとギリシャ語のhemicrania(ヘミクラニア)からでた言葉ですが、ヘミは片側の意味で、医学用語では「片」の字が当てられています。クラミアは頭蓋骨という意味です。
「片頭痛は、あたまの両方に出現することもあるので、その意味では、頭の片方に偏よりがちな頭痛ということで、「偏」頭痛の方が適当なのかも知れませんが、語源上「片」頭痛」となっています。中国語では「偏」が「片側・半分」を意味するため、中国では「偏頭痛」が採用されています。
パソコンで「へんずつう」を漢字変換すると、まず「偏頭痛」が出て来ます。それは広辞苑が「偏頭痛」と記載しているからです。
広辞苑では、古典を含めた文献中での代表的なものを中心に考えており、そのため「偏頭痛」となっており、学術用語としての表記と矛盾することがあるそうです。
しかし「片頭痛」は医学辞典その他でかなり頻繁にみられ、また諸学会により正式採用されています。そのこともあって、広辞苑2009年発行版(第6版)には「偏頭痛・片頭痛」と併記されるようになっています。
(片頭痛と遺伝)
Q.片頭痛は遺伝しますか?母親も片頭痛持ちなので。
【回答】
片頭痛は体外、体内の環境の変化に対して脳が敏感に反応する体質を両親から受け継ぐことが多く、特に母親も片頭痛を持っていることが多いようです。母親が片頭痛だと70%の子供が片頭痛になり、父親が片頭痛だと50%の子供が片頭痛になるというデータがあります。
しかし、親から片頭痛の遺伝子を受け継いでもそれだけでは発症しません。
生活習慣、環境の変化などが引き金となって片頭痛が起きやすい体質を受け継いでいるというだけで、生活習慣の管理ができれば片頭痛は防げるといわれています。
(頭痛の治し方)
Q.頭痛になったら冷やした方がいいのですか?それとも暖めた方がいいですか?
【回答】
一般的には血流障害がみられる緊張型頭痛の場合は首の後ろを暖めた方がよく、脳の血管が拡張する片頭痛の場合は痛む場所を冷やした方がいいといわれています。
しかし、外から冷やしたくらいではせいぜい皮ふから5mm~1cm程度の温度しか変わらず、脳の中まで冷やすことができないため、片頭痛の場合、頭を冷やしてもそれほど効果がないという意見もあります。実際、脳は頭の表面から頭蓋骨を通して1㎝以上の深さにあり、おでこを冷やしたぐらいでは大した効果はなく、単なる気休めかも知れません。
しかし片頭痛を持っている人はしばしば冷えピタやアイスノン、氷などでおでこをよく冷やしています。これは単なる気休めでしょうか?
片頭痛の場合の脳の血管の拡張は脳内だけでなく、頭蓋の外の頭周囲の動脈も拡張
して痛みが発生しています。このことは、片頭痛発生のとき、頭の外の拍動する浅側頭動脈(耳のすぐ前で、ほほ骨のすぐ上のコメカミの所に拍動している動脈)を左右両側を人差し指で圧迫すると、頭痛は少し軽減し、指を離すと頭痛が戻ることからも分かります。同じように片頭痛発生のとき、タオルかヒモ、ゴムで頭を鉢巻きしたりして血管を圧迫したり、あるいは頭を冷やすと頭痛が少し軽減することもよく知られています。
このように痛む場所の血管を圧迫したり冷やすと軽減するのは単なる気休めではなく、頭蓋骨の外の拡張した血管の血流を少なくすることで少し頭痛が和らぐ可能正があります。
ただ、反対に冷やし過ぎるとかえって頭痛が増強することもあります。
片頭痛が進むと脳の反応が敏感になり、光、音、においなどに敏感になるだけでなく、皮膚の感覚も異常に敏感になります。髪の毛をとかしただけでも頭痛がひどくなる
ことがあり、冷やし過ぎると頭痛が増強する可能正もあり、その場合は冷やすのを中止にした方がよいと思われます。
(頭痛の減らし方)
Q.頭痛を減らすには、そのほかにどんなことに気を付けたらいいですか?
【回答】
緊張型頭痛にしても片頭痛にしても、いちばん大切なのは、寝る時間と起きる時間をなるべく一定にして、体にリズムを作ることです。睡眠を規則正しくするだけで、頭痛の原因となる「脳血管の不安定」をかなり防ぐことができます。大人ならできれば6~7時間の睡眠をとった方がいいと思われます。できれば午後10時からの睡眠が理想ですが、そんなに早く寝られない人はできるだけ、日が変わらない時間までに就寝を進めて居ます。
しかし帰りが遅い人や仕事で夜勤があるなど、睡眠時間が不規則な人はきちんと遮光カーテンを引いて、脳が「夜だ」と思えるような、夜の環境を作ってあげましょう。日の光が差し込む部屋で睡眠を取ると、浅い眠りになってしまいます。
睡眠のほかに、気をつけなければならないことは働いているときに、休憩を入れること。連続の労働は脳に負担がかかり、長時間働きすぎると頭痛が起きやすくなります。できれば2~3時間に1回、トイレ休憩のついでに、軽く体を動かすこと。短くても、適切な休憩を入れるようにしましょう。
女性の場合、月経の期間中は、脳の血流が不安定になり、片頭痛を起こしやすいので、できるだけ睡眠時間と労働時間に気を配り、体をいたわって無理をしないようにしましょう。
睡眠時間を整え、きちんと休憩をとる、それだけでかなり改善して来ます。特に片頭痛発作を予防するには頭痛ダイアリーをつけることです。日常生活を記録すると、片頭痛がくる理由がわかるようになります。
これにより生活習慣のなかで片頭痛に最も関連していると思える日常生活リズム、睡眠時間、湿度・匂いなど環境因子、食事について記録していくことができ頭痛との関連がわかります
(片頭痛前の閃輝暗点)
Q.片頭痛が起こる前の前兆としての閃輝暗点はなぜ起こるのですか?
【回答】
片頭痛が起こる予兆として、生あくび、情緒不安定、むくみなどがありますが、典型的な前兆は閃輝暗点で、ジグザグ模様が視界の中で光りながら拡がって見えます。
典型的には、最初に、視野の中心に何か小さいもの、見えにくい部分があることに気づきます。手で振り払おうとしてもそれが消えません。そのうちギラギラし始め、それがだんだん大きくなり、そしてギザギザの虹の輪のようになって片側の視界に拡がっていきます。
最初の見えにくかった部分が次第に眩いほどに輝いていくので、閃輝暗点と呼ばれています。このような閃輝暗点は約30分ほど続いて、その後、視界の外に消えます。そのあとに見えた視界とは反対側の頭が激しく脈打つように痛みます。
このような閃輝暗点は、ジグザグの虹が動きながら大きく拡がるもの、万華鏡が徐々に拡大するもの、きらきらした水車が回りながら拡がっていくもの、さらには周りのものが大きく歪んで見えるなど、色々あります。しかし、実際は、前兆のない片頭痛のほうが多く、前兆が起こるのは片頭痛患者20~30%程度で、一生、前兆が起こらない人もいます。
それでは閃輝暗点はどこでどのようにして起こるのでしょうか?閃輝暗点の最中に目をつぶってみると、閃輝症状ははっきり見えます。これは閃輝暗点は目ではなく脳で見ていることになります。また脳神経は途中で交差することから、輝暗点が見えた視界とは反対の頭部に頭痛がおこることから輝暗点の発生部位は脳ということが分かります。視覚中枢は脳の後頭葉にありますが、その部分から脳細胞の興奮が小さく波打つ波紋のように広がると考えられています。
最近のMRI検査で、閃輝暗点の、脳の視覚中枢のある後頭葉表面に、興奮と抑制が交互に起こり、水面の波紋のように拡がっていく様子がとらえられています。後頭葉の一部で、視野の中心を見る部分から脳細胞の興奮が始まり、次第に周囲にゆっくりと、1分間に2~3ミリ(時速約15センチ)の速度で拡がっていき、20分もすると後頭葉を超えて脳の他の部分にも影響していきます。
しかし、片頭痛の閃輝暗点の場合、何が脳の波紋の拡がりを起こすのか、残念ながらまだわかっていません。ただ前兆期の後頭葉の血流は全体としては低下していることが知られているので、前兆期には脳の血管が収縮していることが推測されます。
片頭痛の発生メカニズムとして、現在の所、三叉神経―血管説(後述)が有力ですが、そのほかに、何らかの誘因によって脳血管が収縮して、その後、脳血管が拡張することで片頭痛が起こるという説もあります。
すなわち過度のストレスや何らかの刺激により、血小板から、あるいは脳内のセロトニンが大量に放出され、その結果、一時的に脳の血管は収縮することで前兆が起こる可能性があります。その後、時間の経過とともにセロトニンが分解・排出されていくと収縮していた血管が急激に拡張し、拍動性(脈に合わせてズキン、ズキンとする)の頭痛が起きる可能性があります。
なお、セロトニンとは、心のバランスを整える作用のある神経伝達物質で脳内のセロトニンが適切になると精神的なバランスが整い、ストレスの解消に役立つとされています。
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