夜尿症の原因

10歳の男の子ですが、毎晩のように夜尿があります。夜尿症の原因にはどのようなことが考えられますか?
【回答】
夜尿の原因は、大きく分けて三つあります。
第一は、抗利尿ホルモンの分泌が悪い場合です。
抗利尿ホルモンは尿として作った水分を再度くみ上げて体内に戻すという働きがあり、主に夜の睡眠中に脳から分泌されます。この抗利尿ホルモンの分泌が不十分だと、水分の再吸収が少なくなり、薄い尿がたくさん作られ、多尿となります。
多尿型夜尿症のお子さんの場合、このホルモンの分泌が悪いのが1つの原因なのですが、いずれは年齢とともに増え、正常に分泌されるようになります。
第二は、膀胱が小さく、尿があまりたまらない場合です。
尿量は少ないのですが、膀胱の発達が未発達で小さくわずかにしか尿を貯められず、少ない尿でもあふれてしまう場合です。
第三は、フルーツ、ゼリー、アイスクリームや味噌汁、スープが好きなお子さんの場合です。
柑橘類が大好きで毎日みかんやグレープフルーツをいっぱい食べていた男の子が、夕方以降柑橘類を食べるのをやめたら夜尿がなくなった例や、また味噌汁をやめただけでも夜尿がとまった例があります。
夜尿に気が付かないのは異常ですか?
9歳の男の子ですが、毎晩おねしょがあり、結構大量ですが、全く気が付かずに朝まで寝ています。体のどこかが悪いのでしょうか。
【回答】
夜尿のあるお子さんは夜尿があっても覚醒しないのが普通です。これは眠りが非常に深いためです。
中には尿意を感じたり、濡れたのが気持ち悪くて目を覚ますお子さんもいます。しかし、このような目を覚ますお子さんは、発育がよくないことがあります。
成長ホルモンは夜間睡眠時に分泌されますが、夜尿のために覚醒すると、この成長ホルモンの分泌も悪くなり、身長があまり伸びないことがあります。
そのため、夜尿があっても覚醒しない方が子どもにとっていいことなのです。
夜中に起きなくても朝までもつように、夜尿を治してあげることが大切です。
水分制限の意義
夕方4時からの水分制限を始めてからは、夜尿はほとんどなくなりました。しかし、飲んでいないから出てないのは当たり前ではないでしょうか。以前のように水分をとればまた夜尿が始まるのではないでしょうか。
【回答】
多尿型夜尿症の場合は、水分制限によりある程度はよくなり、なかには、まったく夜尿がなくなってしまったお子さんもいます。
夜尿が止まったのは、水分を制限したからであって、飲み始めたらまた出始めるかもしれません。しかし、1、2か月くらい連続で夜尿がなくなったら、夜間の水分制限を解除してみて下さい。水分制限をやめても夜尿が見られなくなっていることもよくあります。
それは夜間に分泌される抗利尿ホルモンの分泌がよくなってきたことが考えられます。
夕方以降の水分制限により、夜間、体をやや乾いた状態にしておくと、生体反応として体を潤そうとして抗利尿ホルモンの分泌が刺激され、そのうち正常に分泌され始めるのではないかと思われます。
紙おむつについて
紙おむつをしていると、夜尿はなかなか治らないと言われますが、紙おむつをやめるとなると、毎日の洗濯が大変ですので、なかなかやめられません。どうしたらよいのでしょうか。
【回答】
紙おむつをしていると夜尿はなかなか治りません。それは濡れた感じが分からず、不快な気持ちが起こらないからだと思います。
しかし、紙おむつをやめると毎回の洗濯が大変です。
一週間に一回、例えば、土曜日はおむつをしない日にして、夕方以降は厳しく水分制限をしてみてはいかがでしょうか。
出ない日が増えてくると紙おむつをしない日を二日、三日と増やしてみてください。
昼間のおもらし
7歳の男の子ですが、毎晩夜尿があります。昼間も少しパンツを濡らしていることが多いです。
【回答】
尿をもらすことを遺尿といいます。昼間のおもらしは昼間遺尿といいます。
夜間遺尿は、夜尿です。
夜尿も昼間遺尿も早く治したいものですが、まず昼間遺尿を治します。
夜尿がある場合は、朝しっかり水分をとって、夕方からの水分を制限するのが治療の基本となりますが、朝しっかり水分をとると、昼間、学校での遺尿の原因になるかもしれません。
そのため、学校ではまめにトイレにいくこと、家ではトイレに行きたくなってもある程度は我慢させることです。家でも学校でも尿意を感じてすぐトイレに行っていると、膀胱がなかなか大きくならないので、家ではトイレに行くのを我慢させて膀胱を少しでも大きくさせます。
昼間遺尿は多くの場合自然に治ってきます。
また、排便が不規則だと尿がもれやすくなります。
子どもは骨盤が小さく、膀胱も直腸もその狭いスペースに入っていて、しかも膀胱の一番敏感な部位のすぐ裏側に直腸が接する構造になっているため、膀胱は便の影響を受け続けることになります。
毎朝、規則正しく排便させるよう心がけて下さい。
育て方が原因?
8歳の男の子で、おねしょが続いています。仕事が忙しく、十分に子どもとかかわることができません。愛情不足ではないかと心配しています。
【回答】
父親にひどく強く怒られたり、虐待を受けたり放置されたりすると夜尿の頻度が増えるのは事実です。しかし、お母さんが少々、きつく叱ったり、子育てに十分に時間が取れなかったとしても、その程度のことでは夜尿の原因になることはありません。
まずは、水分のとり方や規則正しい排便など生活面に注意を払ってみましょう。
自分で夜中に起きるようになった

夜中に目を覚まして、自分でトイレにいくようになりました。
【回答】
明け方、自分でトイレに行きだしたのはお母さんにとっては大変嬉しいことだと思います。
しかし、これはまだ治ったとはいえません。
夜尿が治ったとは、夜布団に入り、翌朝起きるまで排尿はしないということです。
夜中にトイレに行くことを“トイレおねしょ”と呼ばれています。
布団が濡れなくなれば、お母さんにとってはいいことなのですが、お子さんにとっては翌日に疲れが残ったり、発育に悪影響がでたりすることがあります。
治療してもなかなかよくならない
指示に従って治療を始めましたが、相変わらず毎晩夜尿があります。このまま様子をみてもよいのでしょうか。
【回答】
夜尿は一気に治ることはまれです。毎日あった夜尿が、たまにない日があったり、一晩に二回あった夜尿が一回になったり、濡れる量が減ったりしながら徐々になくなっていきます。
夏は治るが冬になると毎日おねしょが続いています
夏はほとんど夜尿はなかったのですが、秋になって失敗が増え、冬には毎日、おねしょがあります。
【回答】
夏は汗をかくため、体内の水分量が少なくなり、夕方以降の水分制限と同じ状態になり、夜尿の頻度が少なくなります。
秋や冬は汗をかくことが少なくなるため、涼しくなったら水分を制限することが必要です。
また寒くなると膀胱が縮まった状態になり、膀胱の容量がさらに少なくなります。
冷え症は夜尿を悪化させやすいので寝る前にゆっくり入浴させて身体全体をよく温めることが必要です。
寒さが厳しくなってきたら、電気毛布などで布団を温めておくことも大切です。
冬でも暑がりのお子さんは、電気毛布の代わりに湯たんぽを使用するのもよいと思います。
寝ている間に布団をはいでしまうお子さんは腹巻きをするのもよいと思います。
寒い時は普段から体を冷やさないように上着を着たり、5本指ソックスをはいたり、スリッパをはく習慣をつけるようにしたらいいと思います。
反抗的な子ども
7歳の男の子ですが、水分制限をしたら夜尿のない日が多くなったのですが、次第に反抗的になって水分制限をしてくれないようになりました。どのように対処したらよいでしょうか。
【回答】
水分制限ができない場合はしばらくの間、お待ちになったらどうでしょうか。夜尿症は放置していても、ほとんどの場合自然に治ります。お母さんが焦って厳しくしかると、母児関係に悪影響がでます。夜尿が治ったが、お母さんのことが嫌いになってしまったら悲しいですね。
宿泊
中1の男の子です。来月合宿があり、四日間外泊します。夜尿のため本人は参加したくないと言っています。なにかいい方法はないでしょうか。
【回答】
夜尿のある子どもの約70%は外泊への参加で悩み、実際に参加を見合わせている方が20%もいるそうです。その対策として
①昼間に水分を多めに摂って夕方以降は少しでも減らすようにします
宿泊のときは、昼間に様々な活動があり、思うように水分が摂れない、また夕食時も水分の制限ができないことがよくあると思います。
しかし、予め先生に伝えておいて、水分は昼間に多めに摂って、夕食のお味噌汁、お茶はなるべく減らすようにします。
②寝るときの服装
予め、先生に事情を話して、黒や濃紺のような黒っぽい色のジャージをはいて寝ます。
夜尿でぬれても、色があまり変わらず分かりにくいです。
③寝る時
寝る前には必ずトイレに行くようにします。
もし寝て間もなくの夜尿なら、先生が寝る時間に起こしてもらい、心配だったら朝も起こしてもらうとよいと思います。
④毎晩夜尿がある時、量が多い時
男の子:肌ざわりの良いタオルをパンツの中で巻いて寝るとよいと思います。(夜尿でぬれたタオルはビニル袋に入れて、予め先生に捨てる場所を聞いておく)
女の子:尿取りパットをするとよいと思います。(汚物入れに捨てる)
宿泊前からおうちで練習しておくと安心です。
低身長
小学校2年生の男の子です。毎晩夜尿があります、身長がとても小さくてよく幼稚園児に間違えられます。夜尿と低身長は関係あるのでしょうか。
【回答】
夜尿のあるお子さんの場合、身長が低いことが多いようです。
この場合三つのケースがあります。
第1は、夜尿症のお子さんは“おくて”が多く、小学校の内は小さいが、中学高校で伸びて正常に達する場合があります。
第2は、夜尿があるため親が夜中にお子さんを起こしている場合。
身長を伸ばす成長ホルモンは夜間睡眠時に最もよく分泌されますので、夜間に睡眠が中断されると成長ホルモンの分泌が妨げられ、身長があまり伸びない場合があります。
第三は、成長ホルモン分泌不全性低身長症のお子さんではしばしば夜尿がみられます。
極端に身長が低い場合は、小児科の専門医に診てもらい、低身長の原因を調べる検査をした方がよいと思います。
夜尿症アラーム療法の効果
夜尿症に対するアラーム療法はなぜ効果があるのでしょうか。
【回答】
アラーム療法は下着にセンサーを付け、夜尿をしたとたん、ブザーでおねしょを知らせ、睡眠から目覚めさせるという行動療法です。
眠っている間、無意識的にアラーム音に反応して夜尿を止めることを繰り返している内に前頭葉の排尿中枢を刺激して、排尿を制御する力が付いていき、夜間の膀胱の蓄尿量が増えていき、さらに視床下部を刺激して抗利尿ホルモンの分泌を増加させて、産生される尿が濃縮され、夜尿量の減少、夜尿回数の減少へつながり、夜尿の時間帯が徐々に朝方へ移行して治癒に至ると考えられます。
アラームが鳴る時間が徐々に朝方になってくると、改善していると判断できます。
有効率は70%前後ですが、一旦治ると、西洋薬による薬物療法に比べて圧倒的に再発率が低いという特長があります。このようなアラーム治療は夜間多尿の患者より、覚醒困難の患者のほうがより有効と考えられています。
一晩に2回以上夜尿をする場合は、複数回目覚めると睡眠不足になることがあるため、
1回目の夜尿時のみアラームを装着し、あとは装置をはずすことが望ましいです。
以下のようなケースだと、アラーム治療は無効なことが多いと報告されています。
・飲食物の制限をしていない
・夜尿者自身がアラーム治療を望んでいない
・家族のサポートがない
子供の眠りは深いためアラーム音に気づかず起きられないことがあります。そのような時には家族が患児を起こしてサポートしなければなりません。また、自分で目覚めても、慣れてくると起きなくなることもあるため、その場合も家族の協力が必要です。
寝室が遠いと保護者にアラーム音が聞こえなかったり、一緒に寝ている兄弟や父親が寝不足になるなど、家庭環境にも配慮する必要があります。
毎晩、夜起こしてトイレに行かせた方がいい?
小学校6年生の男の子です。毎晩、夜尿がすごくて大量のおねしょをします。夜、定期的に起こして排尿させた方がいいでしょうか。
【回答】
「夜起こしてトイレに行かせる」は「夜尿アラーム」とは似ているようですが、全く別物です。
「毎晩、起こしてトイレに行かせる」は、夜尿をしていない時でも決まった時刻に起こして排尿させるため、夜中に排尿をする習慣を自ら作っていることになります。
さらに、成長期の子供の場合、眠り始めは成長ホルモンが多く分泌される時間帯であり、その時に定期的に起こすと発育上、よくありません。
夜尿アラームは夜尿をしたときだけ目を覚まさせます。そのため、夜間の排尿を習慣づけるものではなく、睡眠を必要以上に妨害しないといわれています。
夜尿アラーム療法で起こすのは良くない?
アラーム療法をしてみようと思うのですが、夜中に子どもを起こすのはよくないのではないでしょうか。
【回答】
夜尿症が続いていると眠りが浅くなったり不快な思いをしたり多くの不利益があります。
アラーム療法で短期間、夜中に起こしても、それで夜尿症が治れば、不快な思いから解放され眠りも
深くなり睡眠の質もよくなります。
アラーム療法は、子どもを起こすことによる不利益よりも夜尿が治るという利益が大きいのです。
もちろん必ず有効とはいえませんので3ヶ月位がんばっても効果がでない場合は一旦中止します。
夜尿症の治療で最も重要なことは、夜尿の原因を明確にし、原因に基づいた治療を選択することです。まず最初に、夜間尿量が多いための夜尿なのか、膀胱が小さいための夜尿なのかを見極めます。
1.多尿型夜尿症
尿量が多いためにおこる夜尿です。
夜間睡眠時尿量が体重1kgあたり5ml以上(20kgのお子さんの場合で100ml以上)の場合、多尿型夜尿症と分類されます。
夜間睡眠時尿量とは、夜尿の量+朝一番の尿の量です。体重にかかわらず、夜間睡眠時尿量が250mlを越える場合は、典型的な多尿型夜尿症です。また、多尿型夜尿は尿を濃縮する力が弱く、薄い尿が多量に出るため、朝起床時に採尿した3日間の早朝尿の浸透圧が平均800mOsm/L以下であれば多尿型といえます。
2.膀胱型夜尿症
機能的膀胱容量(尿を我慢して最大限に尿をためた時の尿量)が 体重1kgあたり7ml以下(体重が20kgのお子さんの場合140ml以下)の場合が 膀胱型夜尿症です。
膀胱型夜尿は膀胱機能が未熟なため、尿が出てしまいます。
尿は濃縮されているのに夜尿があるので、3回の早朝尿の浸透圧が平均800mOsm/L以上あります。
このように朝の起床時の早朝尿の浸透圧を測定することで多尿型か膀胱型に分類できます。
膀胱型夜尿は実際に膀胱の容積が小さい場合と、膀胱自体は小さくないが充分に尿をためることができず漏れてしまう場合があります。
3.未熟型夜尿症
排尿機能が未熟なための夜尿症です。
夜間睡眠時尿量は多くなく、また機能的膀胱容量も小さくないのに夜尿が続く場合は、排尿機能が未熟なための夜尿の可能性があります。
生活指導(多尿型にも膀胱型にもあてはまります)
あせらず、おこらず、おこさずの三原則は、どのタイプの夜尿症の治療にもあてはまります。
夜尿症の治療は辛抱強く、あせらないことが大切です。
《多尿型夜尿症を改善させるための生活習慣》
水分摂取コントロールと塩分の制限
1.水分は午前中に充分とらせます。
昼食の時も、水分は特別制限しません。
2.午後、昼食後からはあまり水分はとらないようにし、のどが乾いても一回に飲む水分は150ml以内にとどめます。
3.夕方4時以降は、なるべく水分をとらないようにし、夕食は早めにすますようにします。
夕食の時の水分は、お茶150ml程度にします。
特に牛乳、みそ汁、フルーツは控えめにし、午前中にとらせるようにします。
お風呂上がりにのどが渇く場合は、うがいをしたり、氷を口に含んだりして、のどを潤すようにしてください。
《膀胱型夜尿症を改善させるための生活習慣》
自宅での排尿はできるだけ辛抱させて膀胱容量の増大を図ります。
そして排便コントロールが大切です。
毎朝定期的に排便する習慣をつけるようにしましょう。
夜尿症(おねしょ)をなくすためには生活習慣の改善が必要です。
①規則正しい生活をしましょう
②夕方4時以降の水分、塩分の取り方に気をつけましょう
③夜は無理に起こさないようにしましょう
⑤寝る前に必ずトイレに行かせるようにしましょう